ゆいわのものがたり

序・てつくずのゆめのあと

 風一つ吹かない、暗くて静かな夜の中にその男が佇んでいた。外套は黒。髪の色は白。月すら浮かばない夜の闇に紛れて人相は認識できなかった。 ものも言わず、動くことも無く、ただどこかを眺めるように突っ立っている。その姿を見つけて、声をかけようかと…